ZOAシリーズ


ZOAシリーズは、有田焼を愛するあまりの ひらめきから生まれました

2016年、ZOAの発案者は有田焼創業400年を控え、中枢になるような新商品を作りたいと思いながら、佐賀県立九州陶磁文化館の柴田夫妻コレクション()を観るために展示棟に通い詰めたそうで、そして、ある日アイデアがきらめいたそうです。

 

それは、古い陶磁器を忠実に手描きで再現するシリーズ(プライム)と、その意匠を現代的にデザインして、最新技術のパッド印刷(**)で作るシリーズ(デイリー)を対比させて紹介することで、それは大変意義のあることではないかと考え、商品化に向けて動き出します。


まず、どの意匠にするか、九州陶磁文化館蔵の柴田夫妻コレクションや他の美術館などの膨大な資料から選んだそうですが、いち早く気に入ったのが「染付梅鳥文」(柴田夫妻コレクション)でした。

 

(他の意匠は、柴田夫妻コレクションから「雲割山水文」、「芙蓉手花鳥文」と「捻り文」は聖門古陶磁参考館所蔵の図録よりセレクトしたそうです。)

次に、現代的にリデザインする作業ですが、これは、当時、まるぶんさんの社員で「佐賀県立有田窯業大学校」卒の原直久(はらなおひさ)さんに依頼したそうです。

驚くことに、数回のブラッシュアップで絵柄のデザインは決まったそうです。

そして、発案者である専務より社長に開発状況を報告し、入社1年目の社長のご長男をメンバー加えてチームをつくり、一丸となって開発を続けます。

 

フォルムは、初期伊万里(黎明期の有田焼)に多く見られる円縁の7寸皿(直径21cm)を基本にして、その縮小サイズの4.5寸皿(直径14cm)の2アイテムに決定し、深さや重なりなどは使い勝手を熟考して、試作と修正を繰り返して、完成させました。

 

いよいよ最終段階の印刷に入るのですが、有田にはパッド印刷による加飾ができる窯元が少ないそうですが、以前よりパッド印刷用機材を導入して製品化している窯元に製作を依頼します。

 

開発計画が具体的になると、パッド印刷用の形状曲面に合わせたフィルムを作るために、デザインの微調整が必要になったそうですが、段縁を含めての複雑な印刷でしたので、何度も手直しを加えなければならなかったそうです。

それから、COCONでは取り扱っておりませんが、忠実な手描きによる写しのプライムは、当時、金善製陶所に勤務されていた絵付職人の田代 順久(たしろ のぶひさ)さんにお願いしたそうですが、難しいとされる初期伊万里の写しが出来る稀有な職人さんで、たった1回の試作でOKがでたそうです。

 

有田焼の職人さんの技術力の高さに、改めて敬服するエピソードだと思います。

こうして、着想から6か月超、試行錯誤を経て、ZOAのプライムとデイリーは完成を見ることになり、目標通り2016年6月の『インテリアライフスタイルショー(東京)』の有田焼ブースでお披露目となりました。

 

400年の今昔の対比を意匠と技法によって表現したZOAは、「Zero Origin Arita」の略で、

 

モノづくりの原点に立ち返るという思いを込めて名付けられました。

 

その後、デイリーのシリーズに、カップとボウルのラインナップを加えて4形状・4柄となり、ますます愛用されるシリーズとなりました。

 

400年間という時間の経過と、有田焼への並々ならぬ愛に想いを馳せながら、お使いいただけましたら幸いです。

*柴田夫妻コレクション

柴田明彦(1940~2004)、祐子(1944~)ご夫妻から佐賀県立九州陶磁文化館に14年間、19回に渡って寄贈された、合計10,311点もの膨大な有田焼の磁器コレクションです。

世界的に見ても類例がなく、学術的にも極めて貴重な資料として認められ、「有田陶磁(柴田夫妻コレクション)」の名称で国の登録有形文化財(美術工芸品)に工芸部門第1号として登録されました。


クニエダヤスエさんの著書(クニエダヤスエの和食卓 基本の和食器ぞろえ)の中にも柴田さんとの交流が記されています。


**パッド印刷

特徴は、弾力のあるシリコンパッドを利用して、スタンプを押すように印刷する点で、曲面や凸凹のある立体物への印刷ができるようになったことです。

また、小さなモノにも細かな印刷が可能で、多色刷りもできます。

そして、低コストで印刷できることも嬉しい特徴のようです。