「訪問記」の第1回目は、食空間コーディネーター、フードコーディネーター、卓育インストラクターでいらっしゃる ひがしきよみさんの教室を訪ね、クニエダヤスエさんについてお話を伺いました。
テーブルコーディネートという考えや方法を日本で初めて紹介し、テーブルコーディネーターの先駆けとしても活躍し、個性的で使い勝手のいい『クニエダヤスエSTYLE』シリーズの礎をつくったクニエダヤスエさん、COCON店主もあこがれていたクニエダさんとはどのような人だったのでしょうか。
クニエダさんが亡くなられて10年。
クニエダさんを知る人々は、気さくでいい人だった!素敵な人だった!と口を揃えます。
どのようにいい人で、素敵だったのか?
今となっては書籍でしか知る方法がないのかもしれませんが、書籍ではわからない生のクニエダさんを知りたいと思っていた折り、クニエダさんが立ち上げに関わった「食空間と生活文化ラウンドテーブル」(現「NPO法人食空間コーディネート協会」)で幹事として協会を支えた 食空間コーディネーター、フードコーディネーター、卓育インストラクターの ひがしきよみさんにお話しを伺う機会を得ることができました。
2021年6月、バラと紫陽花の花が美しく咲く庭を抜けて、『ひがしきよみテーブル&フードコーディネート教室』に伺いました。
教室には、最初で最後になってしまったそうですが、クニエダヤスエさんが教室を訪れた際の貴重な写真が飾られていて、クニエダさんを感じることができました。
写真は、ひがしさんがわさびを江戸切子のわさびおろしでおろしているのを、クニエダさんが楽しそうに見守っているシーンだそうです。
開口一番、ひがしさんはクニエダさんと共通している点があると話してくださいました。
■共通点①は、赤が好きな点
クニエダさんは、著書の中でも旦那様の好みで白に囲まれて暮らしていたので、アクセントになる赤が好きと書いていました。
そして、鮮やかな赤のうつわを作ったり、赤のうつわを使ったりしてコーディネートしていました。
ひがしさんも、赤がお好きだそうで、名刺入れはきれいな赤、そして、赤を配したブローチを着けていました。
■共通点②は、小さなモノが好きな点
クニエダさんは、お母様の影響もあってミニチュアの小物やドールハウスを集めていたことは有名ですが、ひがしさんも小さなモノがお好きで、箸置きなどもたくさんコレクションしていらっしゃいました。
写真は全てひがしさんの教室の食器棚の引き出しの中身です。
箸置きや小皿、塩コショウ入れなどが収納というより美しく展示されていました。
■共通点③は、うつわの好みが近い
クニエダさんとひがしさんは、仕事で一緒に旅をする機会があったそうで、その際に、うつわ探しを愉しんだそうですが、気に入って購入しようと思ううつわがたまたま同じだったそうです。
クニエダさんは、結局、ひがしさんに譲ってくださり、ひがしさんが購入したという美しい染付のうつわ。今も、大活躍しているそうです。
また、クニエダさんが作ったオリジナルのうつわを、ひがしさんは現在も大切に使っていらっしゃるそうです。
↓下の写真 左2カットはクニエダヤスエさんオリジナルのうつわです。
残念ですが現在は販売されていません。裏印には『邦』の文字が記されています。
↓有田焼の白い桜の花びら型の小皿は、ひがしさんのオリジナル商品。こちらも、現在は販売されていません。
■共通点④は、片付けや整理整頓が好きな点
クニエダさんは、ご自分を『整理魔』と呼び、片付けに関する本も出版されているほど、食器に限らず身の回りのモノの収納法にこだわりがあったようです。
著書に『収納のコツは、いかにたくさんのものをしまうかではなく、出し入れが楽にできるか、につきます。』と整理収納の極意を書いています。
『クニエダヤスエSTYLE』のうつわも、収納を考えて作られているモノが多いように感じるのですが、それも長く愛用できるポイントだと思います。
ひがしさんも、教室の食器棚や引出しに、用途別・色別などにきちんと仕分けて、機能的で美しく整然とうつわやリネン類を収納していらっしゃいました。
■共通点⑤ラベルを活用
クニエダさんも、中身をラベルに書いて貼り付けるラベリングを多用していらっしゃったそうですが、ひがしさんも印刷したラベルを活用して、中身をわかりやすく表記していました。
左の写真 ラベルを貼って、中身が誰にでも一目でわかる工夫が施されていました。
■共通点⑥は私感ですが、マメなところ
クニエダさんは、とてもマメな方で、冷蔵庫や調味料ラック、各引き出しなども、とてもきれいに整理してたそうです。
ひがしさんの冷蔵庫の中は見せていただきませんでしたが、きれいに整頓されていることは、容易に想像できます。
なぜならば、教室の引き出しを開けて写真を撮らせていただいている間にも、体が勝手に動いてキビキビと収納しているモノの乱れを直されるので、ひがしさんの手が入っているカットが何カットもあったからです。
■共通点⑦はないモノは妥協せずに作る
クニエダさんは帽子のデザイナーとして40代まで活躍されていた方なので、テーブルマットやクッションカバーなどは、ご自分で針を持って手作りすることもあったそうです。
そして、ひがしさんも「ないモノは作る!」とおっしゃって、いろいろ自作されて素敵なコーディネートを完成させていらっしゃいます。
■その他の共通点、諸々
そして、食べることがお好きなこと、ていねいに暮らすということを大切にしていることも共通しているのではないかと、お話を伺いながら思いました。
そして、旦那様と仲が良く、仕事上でも大切なパートナーである点。
■特筆すべきクニエダさんのこと
クニエダヤスエさんは、カリスマ性があって、リーダーとしての風格があり、悪口を言わず、江戸っ子気質で、(うつわ好きにとってもそうですが)ひがしさんにとってもあこがれの人だったそうです。
クニエダさんは、お刺身が好きで、お酒も好きで、料理を作るのも、大勢で食事をするのも好きで、サッカー観戦も好きだったそうです。
そして、寂しがり屋な面もあったようで、そんなところは、親近感を覚えます。
クニエダさんは、『家庭で使う器には、これを入れなければいけないという決まりはありません。誰もが自由な発想で好きなように使っていいのです。』と著書の中で書いています。
(COCON店主は、この考え方に共感してファンになりました。)
ひがしさんも、また、著書『食と器 伝え残したい季節の料理 〜和洋の器に盛り付けて〜』のはじめにで『この料理にはこの器ときめず、自由な発想でうつわ選びをし、一器多用をお楽しみ頂けたら、嬉しく思います。』と記しています。
クニエダさんとひがしさん、おふたりのテーブルコーディネートは違っても、基本的な考え方は近いのでは?と思いました。
また、クニエダさんが帽子デザイナーからテーブルコーディネーターに転身した理由は、『自分たちの暮らしや食卓をもっと豊かにしたかったから』と著書に書いています。
そんなクニエダさんの想いは、家族や食を大切にし、暮らし方にこだわりたいと思うわたしたちとも共通しているのではないかと遅まきながら気付きました。
そして、クニエダヤスエさんは亡くなっても、『クニエダヤスエSTYLE』は残り、そして、クニエダさんの精神はクニエダさんに関わった人々(もしかすると、クニエダさんファンのわたしたちも!)によって、しっかりと受け継がれ、時流をプラスしながら発展しているのではないかと思いました。
クニエダさんが手書きのメッセージを添えてひがしさんへ贈った著書は、大切に保管されていました。
微力ながらCOCONも、欧米のテーブルコーディネートの楽しさや便利さを日本に紹介してくれたクニエダさんの想いや『クニエダヤスエSTYLE』の商品を、クニエダさんを知らない若い世代の方々にも伝えていきたいと改めて強く思った素敵な時間でした。
最後に、取材への協力を快諾し、長い時間を費やしてお話しくださり、貴重なお写真などをご披露くださったひがしきよみさんに心より感謝申し上げます。
■参考文献
クニエダヤスエの和食卓 基本の和食器ぞろえ(2008年 初版第1版)じゃこめてい出版
クニエダヤスエのすてきなひとり暮らし(2007年第1版)大和書房
ひがしきよみ著 食と器 伝え残したい季節の料理 ~和洋の器に盛りつけて~(2015年)
株式会社優しい食卓
食空間コーディネーター
フードコーディネーター
卓育インストラクター
アシスタントカラーコーディネーター
株式会社インフィニータ取締役
ひがしきよみテーブル&フードコーディネート教室主宰
赤堀フードコーディネータースクール講師
東京家政学院大学 非常勤講師
学校法人 ソニー学園 湘北短期大学 非常勤講師
食器メーカーコンサルタント
ホテル・レストラン食空間コンサルタント
朝日酒造(株)コンサルタント
TV・ラジオ・雑誌・百貨店等でテーブル&フードコーディネート
テーブル&フードコーディネートセミナー・イベントの企画運営
日本フードコーディネーター協会正会員
公益社団法人 日本料理研究会 特別会員
一般社団法人 和食文化国民会議 正会員
TALK食空間コーディネーター資格認定講師
NPO法人食空間コーディネート協会正会員
著書:食と器 伝え残したい季節の料理 ~和洋の器に盛りつけて~(2015年)
株式会社優しい食卓(株)他
《取材後記》
今回の取材は、インスタグラムでつながることができたひがし先生にクニエダヤスエさんのお話を聞かせてくださいとお願いしたことから始まります。
先生はご快諾くださり、ご多忙の中、早速お時間を作ってくださり、取材が実現しました。
ひがし先生は、教室を初められて25年!だそうですが、ご自身の教室以外にも大学や短大などの講師や食空間・食器・食品などのコンサルタントの仕事等々、多忙を極めていらっしゃいますが、インスタグラムでテーブルコーディネートの素晴らしさを毎日発信していらっしゃいます。ご興味のある方は、ぜひ、ご覧ください。
ひがし先生は、やさしい先生!という感じの方で、江戸っ子気質のクニエダさんとはちょっと違ったタイプなのかもしれませんが、クニエダヤスエさんを十分に感じさせていただきました。ありがとうございました。
バラの季節に、ヘレンドのウィーンのバラのシリーズで特別な紅茶と、暑い日でしたので黒ビールのグラニテ(粗く削った氷のお菓子)を出しいただきました。
行き届いたおもてなしに、感激し、感動するばかりでした。